審査員総評

RED SEVEN社長
李泫錫
(イ・ヒョンソク)

現在、スマートフォンデバイスは全世界55億人に普及しています。人類の歴史の中で、同じ規格の「読みもの」がこれほど多くの人に同時に普及したことはありません。縦長形式のウェブトゥーンは、このスマートフォンに最適化された漫画形式と言えます。この新しいフォーマットに多くの方が挑戦してくださいました。今回投稿されたたくさんの貴重な作品を見て、また安心しました。

現在蔓延している「ウェブトゥーンはスタジオ制作形式でなければならない」「カラー原稿でなければならない」という認識にもかかわらず、様々な形式的実験作品が投稿されたからです。 現代社会に対する陰鬱な考察を扱った作品から、爆発的な力を持つ少年アクション物まで、内容的にも充実していたと思います。

「スマートフォンデバイス規格」という限界を、むしろ原動力にして応募してくださった多くの方に心から感謝いたします。マンガというジャンルが持つ最も強力な力は自由にあると思います。 その自由が見開きの紙面からスマートフォンデバイスにも拡張されていく過程に皆さんがいると思います。作品と、可能性と、才能と出会わせてくださったジャンプトゥーン編集部の皆様にも深く感謝いたします。作家という才能が新しい創作形式という遠い海に向かうとき、皆さんが光を照らし、一緒に漕ぎ出す仲間なのでしょう。

ジャンプTOON統括編集長
浅田貴典

様々なバリエーションの作品、作家さんにご応募いただきたいへん嬉しいです。即戦力としての評価、原石としての評価様々ですが、連載を意識させる作品も数多くありました。

彩色に力を入れる方、縦スクロールで見せる演出に拘りを見せる方、あえてコマを連続で置いて見せる方、さまざまなアプローチがありました。縦の形式で作家性あふれる作品を発表したいというマグマが渦巻いている事を実感しております。

大賞

賞金 100 万円

ジャンプTOON連載決定!!
少年ジャンプ+に受賞作を掲載決定!

ミリオンモージャ

加藤航平

あらすじ

ここは地獄。三等獄卒ベル・リーヴは、今日も職場からの逃亡を図るが、上司に見つかり厳しい折檻を受けていた。地獄に堕ちた「亡者」を罰する獄卒の仕事に興味のないベル。その前に地上の魔王バフォメットが現れ…!?

李泫錫氏 講評

テンポ、絵の大きさ、縦演出、色選択全部理解している。エナジーを感じる。キャラ設計もいい。

浅田貴典 講評

タテマンガとして読みやすい画面設計、彩色など「文法」が完成している。「地獄」×「会社」の枠内で、魅力的なキャラクター、アイデア、エピソードを展開出来ており、企画としても完成度が高く、このまま連載になっても次々魅力的なお話ができる期待を感じさせました。

編集部 講評

好感度の高いキャラクターや、読者の目線を意識した読みやすい画面作り、面白い構図のアイディア等読んでいてとても楽しい作品。

準大賞

賞金 50 万円

ジャンプTOON&少年ジャンプ+に
受賞作を掲載決定!

ゾンビボクサー

マヤ―

あらすじ

ボクサー・万代は、3000万という娘の高額な治療費を稼ぐため、薬物治験で謎の薬を投与される。その結果、人間離れした力を手に入れ、旧知のライバル金本と、3000万をかけたタイトルマッチに臨むのだが…!?

李泫錫氏 講評

映画の手法を持ってきて、いいバランスで仕上げている。シネフィル的な観点からは独立映画の伝統を感じさせ良かった。ただ、それでとどまっている。日常不条理的なお話と合う気はする。

浅田貴典 講評

映画的なカメラワーク文法としてのタテマンガとして、ストレスなく読めました。「読み切り」として起承転結も過不足無く、完成度が高く、読ませました。ただ連載として考えると、ある種「闇落ち」した主人公なので展開が難しいとも感じさせました。才能の総量は高い作家さんだと思うので、将来に期待します。

編集部 講評

キャラクターの表情、心理状態の表現が巧みで、サスペンス的な演出が印象的。縦読みに合うコマとフキダシで読みやすい点も良い。


205

きゃなむ canam

あらすじ

超高身長205cmのサラリーマン・家定(25)。平和に日々を過ごしたいという思いとは裏腹に、その人並外れた長身が理由で様々な苦労事を強いられてしまう。しかし、そんな家定だからこそ見つけられる、幸せもあって…。

李泫錫氏 講評

少し惜しい部分があるが、完成度が高い。縦のマンガだから身長が高いキャラを出したアイディアだけではなく、キャラクター性自体がうまく生きている感じ。絵は密度が高いが、白黒の絵でも的確に演出しているのでさらさら読める。基本技の高さを感じる。

浅田貴典 講評

「背が高い会社員」という一点のアイデアを丁寧にふくらまし、この企画でないと描けないキャラクター、エピソードを作り出せるのは、「どう面白く読ませるか」という技術の引き出しの多さ、技量の高さを感じさせます。幸せな職場ものとして、いろんなキャラクターが出てくる想像が膨らみました。読者が「好き」になるレベルにとどまらず「大好き!」になるにはどうすれば良いか、将来に期待します。

編集部 講評

キャラを描く強い意識があり、高身長だからこそ見つけられる小さな幸せ等、細部にこだわったエピソードを考えられている点も◎。


果てへ

Sorihash1

あらすじ

人類がほとんど絶滅し、化け物のような謎の生命体がはびこる終末世界。化け物から「逃げる事に特化した」探索隊が、「倒す事に特化した」戦闘者に出会い、自分達の世界を広げる為、謎の生命体に戦いを挑む事になり…。

李泫錫氏 講評

縦の表現に挑戦した意図が目立つ作品。過去よく見てきた世界観設計などが少しきになった。表現のバリエーションなど研究する必要がある。

浅田貴典 講評

世界観、カメラワーク、彩色などは自分の意図する演出アイデアがあり高評価です。ただ、演出に重きを置きすぎてキャラクターの魅力を伝える部分が少ないように思えました。映画やアニメより、タテマンガでは「世界観の絵」の攻撃力は低い分、キャラクター・ストーリーで読者をひきつける必要があります。

編集部 講評

終末世界という舞台をセピア色で仕上げられた画面等、作者の世界観を浴びられる特別な雰囲気を纏った力作。分かりやすい設定も◎。


TAMAKO

北大路みみ

あらすじ

オバケを成仏させることが出来るが、成仏させる度に身体に刺青が刻まれる鈴木玉子は、現世に未練を残したまま死んで50年のオバケ矢之助と交流するうちに恋に落ちてしまうが、日に日に矢之助の様子がおかしくなって…?

李泫錫氏 講評

作品としての完成度自体は高い。ただ、キャラの視点などの整理がされておらず、多様な解釈が混乱を呼んでいる。

浅田貴典 講評

キャラクターデザイン、演出、彩色など自分の節回しをすでに確立しているところは高評価です。あとはお話として、スタートとゴールの間を、どう読者を面白く読ませることが出来るか。短編としての切れ味を意識してほしいと思いました。ミスリード、ダブルミーニング、切れ味のある言葉、結末へのジャンプアップへの意外性などなど、「より面白く見せる」ことへの追及を深めれば、次のステージへ上れるはずです。

編集部 講評

切なさで心動かされる作品で、画力・演出力も高い。オリジナリティあるキャラデザと、配色で、印象に残る画面を構成できている。

佳作

賞金 20 万円

ジャンプTOONに
受賞作を掲載決定!

天気雨

きりさめ

あらすじ

溺れたネコを助けようとしたハイネの前に、ネコ専門の死神梵が現れる。梵は同級生にいじめられているハイネに神気を授けるが、その最中ネコの悪霊に同級生らが襲われ•••!?

李泫錫氏 講評

使っているイメージがもう少し豊富に出てほしかった作品。中心イメージは二人の会話シーンだが、中心人物同士が体格・顔ともに似ているので画面がもっと単調になっている。

浅田貴典 講評

スタッフが「良い顔をかけている」と評していまして、浅田も完全に同意です。ギャラの高い「役者」を描ける可能性を感じます。反面、「猫専門の死神」という設定でなくとも成立するストーリーというところが残念でした。「いじめられっ子の逆襲」という文脈のお話だとすれば、もっと心に残るエピソードの切れ味、見せ方が欲しかったです。

編集部 講評

魅力的で色気のあるキャラのビジュアルが◎。キャラの表情や感情を表現する技術もある。


MOTHER LOCKET

こうや豆腐

あらすじ

無機物生命に世界は支配され、人類は地下都市「シラハエ」に隠れ住んでいた。シュウは半人半機としてシラハエに招かれるが、時同じくして無機物生命もシラハエに現れ•••!?

李泫錫氏 講評

よくも悪くも少年漫画。ボリューム感あるストーリで目を引くがストーリも演出も伝統的な「マンガ」の中にまだいる感触。

浅田貴典 講評

モノクロ、タテの長いコマ割りをつかった演出など、やりたいカメラワークがあるのは素晴らしい。ただキャラクター、ストーリーは未整理な印象です。「一番見せたいこと」にむけて、適切なエピソード、キャラクターの数、回し方を意識してほしいです。

編集部 講評

縦読みのギミックを生かした表現の引き出しが多い。こだわりを感じる世界観も好印象。


キラーペアレント

チフェ

あらすじ

凄腕の殺し屋はある日、上官の子供の世話を押し付けられ「りんちゃんママ」として生きる事に。家事と育児と殺し屋稼業、チグハグでハチャメチャな子育て物語がここに開幕!

李泫錫氏 講評

使えるキャラの数が少なく、演出も平面的なイメ―ジ。カラーで弱点をカバーしようとしいるがまだ研究は必要。内容はギャグタッチで面白くかいているので、好感。

浅田貴典 講評

「殺し屋の子育て」というギャップで面白くさせようという部分は良いと思いますが、いきなり異常な状況に飛び、それを当然のものとして作中の人物が演じているので、読者としては振り落とされてしまった印象です。読者を作中に引き込むための「段取り」を付けたほうが良いかと思います。

編集部 講評

殺し屋の子育てというギャップのあるテーマを効果的に使えている。可愛らしい絵柄も◎。

最終候補

賞金 10 万円

鏡の国の君たちへ

前兆

あらすじ

VRゲームの世界で交流するみくとユウ。内向的な性格の2人は、ゲーム内でお互いに励まし合って友情を育むが、ある日を境にユウは突然ゲームにログインしなくなり•••!?

李泫錫氏 講評

色使いがとても上手。一方でコマの配置やコマ内の被写体サイズは全体的に情報量が適切に配置されていない印象。また仮想空間と現実との区別をもっと工夫したほうが、内容がより明瞭に見えてきたと思う。

浅田貴典 講評

魅力的なキャラクターの絵、背景なのですが、マンガとして考えると情報量過多かと思います。一枚絵のイラストとしては良いのですが、まずタテマンガとして「読みやすい」ことを意識してほしいです。

編集部 講評

主人公達が前向きになるラストで、良い読後感を得られる。描き込まれた画面も好印象。


テバ

D.TA

あらすじ

汚染された終末世界を生き抜くイアンは、鉄を感知して引き寄せる能力を使い、相棒のプルコと共に希望の地「テバ」を目指す。その道中に怪しい2人組から急襲を受けて•••!?

李泫錫氏 講評

世界観の説明で終わっていて、世界観の美術イメージを頑張っている。登場人物も多すぎる点とそれによって情報統制ができておらず、サブキャラの説明で終わっている。素材の時系列の配置も悪い。

浅田貴典 講評

世界観を書きたい意識が強すぎて、キャラクター・ストーリーの魅力を出す部分が少なくなっている印象です。題材的には先行作品の多いジャンルだけに、自分なりの野心あふれる試みが欲しいところでした。

編集部 講評

キャラデザや背景等、画力は一定レベル以上。キャラを印象的に描く意識があればさらに◎。

有望作品

賞金 1 万円

  • [旧校舎の呪い] 鍵野ろい
  • [山田さん、魔王城へ赴く] たまごかけ丼
  • [へるへぶん] コーリ キオ
  • [アキアカネ] 小野口琢実
  • [メンヘラ魔法少女] GWANGTANTO

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#11「ジャンプTOON AWARD
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浅田、藤川、三輪の3編集長による
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